「ググっても出てこない」ロボット手術、ラパロとの術野展開の違い本質3選

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「ロボット手術の術野展開って、難しくないですか?」

この質問、よく耳にします。多くの方が抱える共通の悩みみたいです。

今回は、ロボット手術特有の課題を解き明かしましょう。ラパロとの違いを軸に、術野展開の本質に迫ります。これまで曖昧だったポイントがクリアになり、ロボット手術の真価をより深く実感できるはず。

個人の経験に基づく、考察になります。おそらく他にないはず。

ロボット手術が急速に普及する中、理解を深めることは未来への一歩です。「ちょっと気になる」その部分だけでも構いません。一緒に考えてみませんか?

ロボット手術と腹腔鏡手術の展開違いの本質3選

ロボット手術は、ぶれない3D視野と手首のように動くアームが大きな特徴になってきます。これらの特徴から次も三つの違いが出てきます。

1:展開の自由度が高い
2:組織テンションの向き
3:鉗子の入れ替えが困難

ちょっと小難しい話っぽいですか?

大丈夫です!このブログではなるべく簡単にわかりやすくをモットーにしています。

それぞれひとつづつ見ていきましょ〜

1. 展開の自由度が高い

「あー角度がとれない」

ラパロ手術中に聞いたことありませんか?

特に巨大子宮筋腫などで展開が難しい症例でよくあります。「角度が取れない」というのは処理したい組織に適した角度を取れないという意味です

基本的には組織に対して垂直に角度を取る必要があります。これをロボット手術は簡単にクリアすることができます。

腹腔鏡手術:直線勝負の世界

腹腔鏡手術の鉗子は、例えるなら「レーザービーム」のようなもの。真っ直ぐな動きしかできません。

そのため、ポートの位置と処理する場所に応じて、「角度」が決まってしまいます。
(一回ロボット学会で発表したスライドの一部です。)

この制約をクリアするためには、展開によってピッタリの角度を取る必要があります。

まるでパズルを解くような作業になり、ひとつひとつ場を作る必要があります。

例えば左の上行枝の処理の時を考えてみましょう。マニュピレーターで右に大きく子宮を振り、円靱帯で直線化し捻れや角度を調整してバイポーラーが垂直に入る角度を展開します。

ロボット手術:手首のしなやかさがカギ

一方、ロボット手術は鉗子に「手首」がついている感覚。リストのように動くおかげで、処理に最適な角度を自由自在に取れます。そのため

  1. 見やすさを優先した展開が可能。
  2. 展開がちょっと甘くても問題なし。
  3. ただしアームの干渉を気をつける必要あり

画像は左の上行枝を処理している場面。見えてさえいれば基本処理することができます。

要は、ロボット手術は「職人の手のひら」を装備しているようなものなのです。

2. 組織にかけるテンションの向き

展開時にどちらに引っ張るかは目的によって異なります。

腹腔鏡ではどれだけ右手の鉗子を処理したい組織に垂直に入れれるかが大切になります。つまり右手の位置によって取るべき組織の展開が決まってきます。

手首のように動く鉗子によって、ロボット手術では展開の目的は見えやすさを優先できるが、アームの位置を考慮することになると先ほどお伝えしました。

腹腔鏡手術:右手と垂直が命

腹腔鏡手術では、右手の鉗子に対して組織を垂直にテンションをかける必要があります。ほとんどの場合、手前側に引っ張る作業が主流となります。広間膜③より抜粋

組織が右手に対して垂直になるように左手を手前に強く引っ張っています。

腹腔鏡では「右手の鉗子のための展開」となっているのです

ロボット手術:みやすさとアーム同士干渉を優先

ロボット手術では組織のテンションの方向よりも、見やすさとアーム同士がぶつからないことが最優先事項となります。

どういうことかと言うと、

3rdアームを「外側に」配置しスペースを確保します。
②手首の向きも基本的には外側にアームがくるように曲げます。(手首を内側にまげる)

内側に幅広い展開可能となり、小さな展開を1.2番アームですることで手術を進めていきます。

子宮の腹側を処理する時は、3rdアームの手首を腹側に向けてアームが背側に行くようにします。(そうすることで腹側側(図の赤丸)に空間ができる。)

その後の処理ですが、1st,2ndアームで小さな展開を繰り返し、大きく展開を変えずに処理で来ています。

3rdアームで大きな展開を取り、その後2本のアームで小さく処理していくイメージです。

3. 鉗子の入れ替え問題

腹腔鏡手術:鉗子はお好みで

腹腔鏡手術では、多種多様な鉗子を使用可能ですよね。

バイポーラー、メリーランド、腸鉗子、ハーモニックなどなど一つのポートでさまざまな鉗子を出し入れすることが可能です。

そして、左手を展開専用に使うことが可能です。

左手で組織を固定し、右手でバイポーラーで凝固してからハーモニックで切開といったアクロバティックな作業も簡単にできます。言うなれば、「道具のフルコース」を楽しめる状態です。

子宮傍組織の処理②の右上行枝処理しているところですが、バイポーラーで凝固したのち、ハーモニックで切開しています。展開も全く変わっていません。

ロボット手術:道具はシンプルに 3rdアームに命をかける

ところが、ロボット手術ではコストや労力の観点から鉗子の頻繁な入れ替えが難しいのが現実。

そのため、基本装備だと左手バイポーラー、右手モノポーラーといった状態で円滑に手術を行う必要があります。

ここで鍵を握るのが3rdアーム。この1本で展開をしっかり固定する技術が必須となるのです。


まとめと問題

腹腔鏡手術での展開は「各工程で明確に決まっている」、なぜなら処理できる角度が決まっているため展開を右手に合うように調整する必要がある。

ロボット手術はより自由度の高い展開が可能。なれれば効率性が一段上という印象です。ただし、3rdアームによる展開が全てと言っていいほど大切。

手術の進化に驚きつつ、知恵と技術に改めて感謝ですね!

また更新頻度を高めようかなと思っています。Xで通知しますのでよければフォローをお願いします。

問題: ロボット手術と腹腔鏡手術の展開の違いについて、以下の記述のうち正しいものはどれですか?

  1. ロボット手術では、鉗子の入れ替えが非常に簡単で、複数の鉗子を使用することができる。
  2. 腹腔鏡手術では、鉗子の動きは直線的であり、展開には常に一定の角度が必要になる。
  3. ロボット手術では、鉗子の手首部分がないため、組織のテンションの方向に制限がある。
  4. ロボット手術では、展開の自由度が低いため、すべての角度を調整しやすいわけではない。
  5. 腹腔鏡手術では、3rdアームを使って展開の自由度を高めることが可能である。

解答と解説:

  • 選択肢1:誤り。ロボット手術では鉗子の頻繁な入れ替えが困難であり、基本的には3rdアームで展開を固定しながら手術を行う必要があります。
  • 選択肢2:正しい。腹腔鏡手術では、鉗子が直線的にしか動かせないため、角度を調整するために展開を工夫する必要があります。
  • 選択肢3:誤り。ロボット手術では鉗子に「手首」のように動く部分があるため、組織のテンションの方向に自由に対応できるという特徴があります。
  • 選択肢4:誤り。ロボット手術は展開の自由度が高く、適切な角度を簡単に取ることができるため、効率的な手術が可能です。
  • 選択肢5:誤り。腹腔鏡手術には3rdアームがないため、鉗子の入れ替えを工夫して展開を進める必要があります。

正解:選択肢2

ごっそ

ごっそ

百名以上からベスト指導医に選出された8年目若手産婦人科医。研修医時代から腹腔鏡練習や動画メインでの復習を欠かさず、たくさんの失敗を乗り越え現在ダグラス窩閉鎖症例やキロ越えのTLH(RASH)を執刀中。日本産科婦人科学会の若手医員選出。教育を充実させる目的で情報発信を開始しています。

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