膀胱剥離④ 正面突破できません。その理由3選とその対策

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膀胱剥離をしようにもなぜかうまいこと剥がれない。

無理に力を加えてしまい出血をしてしまった・・・

こんな経験ありませんか。

それってあるポイントを見落としているだけかもしれません。

今回は、膀胱剥離がうまくいかない理由3選とその理由と改善テクニックについて解説します。

その1:テンションがかかっていない

剥離部位にテンションがかかっていないと剥離は全くうまいこと行きません。

お菓子の袋を開けるには、必ず2か所で引っ張る必要がありますよね。

同様に、手術においても、反対向きのテンションつまり”カウンタートラクション”が取れていないと鈍的な剥離も切開もすることはできません。暖簾に腕押し状態です。

こんなことはわかっていても、手術、特に腹腔鏡の限られた視野の中の場合見逃していることが多々あります。

子宮の押し込みが甘いことでテンションが緩んでしまっていることがあります。

特に、いつもと異なる状況やチームで手術を行っている場合は注意してください。

前立が経験豊富な医師の場合は勝手にテンションをかけてくれるので意識せずとも良いテンションがかかっていることが多いですが、研修医や習練中の意思の場合は知らぬ間に力が緩んでいたりすることも多々あります。

マニュピレーターは下の先生や看護師さんが持っていることが多いですし、女性医師が増えている現代では肉体的にも力が緩むことが多い印象です。

そのため、改善方法としては、

膀胱剥離の時は、自分でマニュピレーターや腟パイプの位置を確認し力を込めて押し込んでもらう、必要なら位置調整する。

その2.子宮体部がねじれている

次に、膀胱剥離時の”子宮体部がねじれ”について考えていきましょう。

子宮のねじれはかなり危ないのにもかかわらず。わかりにくく、気づかずに進めていくと、大量出血、尿管膀胱損傷につながるかなり危ないピットフォールになります。

なぜなら

  1. 頚部の子宮動静脈の位置がずれる
  2. ねじれがあることで、組織が巻き込まれていく

この二つが生じるためです。

この危険な”子宮のねじれ”の原因として多いのは、子宮筋腫で、重さや圧迫により大きくねじることによるものが多いです。

特に子宮体部側方の筋腫の時に見落としがちになります。

頚部筋腫ではなく、体部筋腫です。

なぜなら、子宮の頚部筋腫の場合は、意識することが可能なので気づくことが多いですが、拡大視の視野の狭い状況で子宮体部がねじれていることには気が付きにくいためです。

改善方法としては、

子宮が直線化されているかどうか毎回確認する。特に円靭帯や子宮上行枝に着目し子宮がねじれていないかを確認する。

その3.膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている

最後は頸部で膀胱自体がはがれにくい場合をお伝えします。

これはこれまでと違い、患者因子になります。特に炎症を起こしていたり、閉経後で組織が固い人に良く見られるもので、正しい層に入ってもはがれにくい時があります。

この時に有効な方法としては、”層を乗り換える”という手法があります。

以前、膀胱剥離をするなら安全性を取るならば腟膀胱筋膜の子宮側で剥離を行うべきだという話を行いました。

実は、剥離しやすいのは腟膀胱筋膜の膀胱側になります。えいやと1膜破ることで膀胱剥離が容易になることがあります。

そのため、改善方法としては

頸管が萎縮や炎症を起こすような要因があるか確認し、層を意識して手術を行う。

膀胱剥離が出来ない時に確認すること

  1. 子宮の押し込みが出来ているか確認する
  2. 子宮がねじれていないか確認する
  3. どの層に入っているか意識し、やりにくければ層を乗り換える

まとめ問題と解説

問題: 膀胱剥離がうまくいかない理由として最も適切でないものを次の選択肢から選びなさい。

選択肢:

  • A. テンションがかかっていない
  • B. 子宮体部がねじれている
  • C. 膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている
  • D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

正解:D. 腹腔鏡の視野が広すぎる

解説: 膀胱剥離がうまくいかない三つの主な理由として、「テンションがかかっていない」、「子宮体部がねじれている」、「膀胱と子宮間の剥がれる層がくっついている」。これらは、それぞれ剥離部位に必要なテンションがない場合、子宮がねじれている場合、そして膀胱と子宮間の剥がれる層が密接している場合に問題が生じます。それに対して選択肢Dの「腹腔鏡の視野が広すぎる」はむしろ、視野が限られていることが手術を難しくしています。

ごっそ

ごっそ

百名以上からベスト指導医に選出された8年目若手産婦人科医。研修医時代から腹腔鏡練習や動画メインでの復習を欠かさず、たくさんの失敗を乗り越え現在ダグラス窩閉鎖症例やキロ越えのTLH(RASH)を執刀中。日本産科婦人科学会の若手医員選出。教育を充実させる目的で情報発信を開始しています。

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