サイドからの膀胱剥離のコツについてお伝えしていきます。
初学者はもちろん、リスクの低いTLHはもうできるようになり次のステップに行きたい人、CS後の膀胱剥離に苦手意識のある方必見の内容になっています。
膀胱剥離がちゃんとできるだけで、他臓器損傷や大量出血のリスクはかなり減りますので大切ですね。
前回は膀胱を頚管のサイドから剥離する方法の手順について説明しました。今回はそれぞれのステップの解説とそのコツについて説明していきますね。
サイドからの膀胱剥離のコツ
1.子宮動静脈を剥離する
膀胱剥離に移る前に、まず子宮動静脈上行枝をはっきりと同定する必要があります。なぜならサイドから入る場所はこの子宮動静脈を基準に決めるためです。
そのため、子宮動脈を上行枝~交差部あたりまで完全に同定する必要があります。
コツとしては以下の3点になります。
- 広間膜展開は子宮側ですすむことを意識
- 子宮動脈本管は止めておくこと
- 上行枝から追っていくこと
広間膜展開時に広間膜後葉を追っていくのではなく、膀胱側腔やラツコー腔を開けていく方法を取っていくと組織が膀胱側についてしまうので子宮動脈周囲にも組織が残って単離が難しくなってしまいます。
つまり、組織を骨盤側につけるように剥離する広間膜腔の展開方法が出来ると、スムーズに子宮動静脈の単離が出来ます。手前味噌ですが、このブログで推奨している広間膜腔の展開ですので見直してみてください。
そして、出血リスクがあるので子宮動脈本管は結紮や凝固で止めておき、その後子宮動静脈を上行枝から追っていってください。
テンションをかけることで周囲の組織で剥がれそうな部分が見えてきますので上行枝に沿って切開していきます。
しっかりと剥離が出来たという基準は、子宮動脈の直線化になります。ここまで来てやっと次のステップ、頸管同定になります。
その2.頸管を子宮動静脈の腹側で同定する。
子宮頸管の解説とコツについて説明していきます。ここが一番の鬼門になるので詳しく説明していきます。
まず、子宮動脈と浅子宮静脈の上をまたいで子宮頸管の位置を確認します。関して確認していくのですが、
この時のコツはこれ
「マニュピレーターに当たってる??」
そうです、マニュピレーターを持っている第二助手とのコミュニケーションになります。押してみて当たっているか確認します。この後もこれを繰り返します。
そして、頸管を何となく同定出れば、子宮動静脈を傷つけないように、膀胱と子宮頸管の間を鈍的にパカパカ開いていきます。この時に無理にがばっと広げると危険なため注意が必要です。
コツとしては、ぐっと力強く開くが、大きく広げないこと
広げ過ぎると容易に出血するため注意してください。
開く層を見つけるときのもう一つコツは、
尿管の位置を確認し、やや瘢痕部より尾側めで剥離層を見つけること
です。腟膀胱筋膜だけでなく、子宮動脈と円靭帯の間の膜があり、膀胱と内腸骨動脈系との膜も存在します。そしてこれらの膜は帝王切開時の炎症や癒着で癒合していたり難しくなります。そのため創部から離れたほうが剥離しやすいわけです。
言い換えると
CS創部は固いから離れたところがいいけど、離れすぎると出血するから、尿管見て場所を決めよう。
となります。
また膀胱に空気を入れる気膀胱や金属カテーテルにより膀胱の位置を把握することもコツの一つとなります。個人的には金属カテーテルの方が細かいアトラクションをかけることができるため好んで使っています。
ここまでで結構長いこと説明になりましたので。”ステップ3.膀胱と頸管の間にトンネルを作り瘢痕部を切除する”以降はまた次回の記事で説明します。
まとめ問題と解説
サイドからの膀胱剥離の際の手順やコツについて、以下のうち正しいものはどれでしょうか?
- 子宮動脈を同定する前に、膀胱を剥離することが最初のステップである。
- 子宮動静脈を同定し、その上行枝から追って剥離することが重要である。
- 子宮頸管の位置は子宮動静脈の上ではなく、下で同定する。
- 膀胱と子宮頸管の間を剥離する際、尿管の位置は考慮しなくて良い。
正解: 2. 子宮動静脈を同定し、その上行枝から追って剥離することが重要である。
解説: 膀胱剥離の際の手順では、まずは子宮動静脈を大まかでいいので同定し、その後子宮動静脈を上行枝から追って剥離するのが重要です。他の選択肢では、1は子宮動静脈の同定が先であるため不適切、3は子宮頸管の位置を確認する際に子宮動静脈の上をまたいで確認するため不適切、そして4は膀胱と子宮頸管の間を剥離する際、尿管の位置を確認しやや瘢痕部より尾側めで剥離層を見つけることがコツとされているため不適切となります。