前方アプローチはとっつきにくいと感じたことありますか?
難しい、怖いとの意見をかなり受けるので苦手意識が強い人も多いのかもしれません。
慣れてしまえばどんな大きい子宮でも安全に手術が出来るという大きなメリットがあります。
これからなるべく詳しく、なるべく丁寧に言語化して説明していきますので手ぶらで楽しんでいってください。
もちろんほかのアプローチでも、同様の理論が使える部分も多いため、側方、後方アプローチをメインの先生も楽しんでいってください。
目次
円靭帯切開がすべてを決める
次のように前方アプローチを行っております。
円靱帯の切除→広間膜腔の展開→子宮動脈尿管交差部の同定→膀胱剥離→附属器処理→傍組織処理→膣切開→縫合
本日は円靱帯の切除の切開方法についてです。
前方アプローチでなかなか上手に広間膜腔を展開できないと悩んでいませんか?
実はその原因、円靭帯の切開にあるかもしれません。
”え、円靭帯なんて”と思っていませんか?
実はかなり重要でして、その後の広間膜腔の展開、そして子宮動脈、尿管の同定に強い影響があります。
もう少し簡単に言うと、円靭帯は周りの組織も含めてしっかり切りきらないと広間膜腔の展開がかなりやりにくくなるのです。
円靭帯の切り方
円靭帯の切り方ですが、一言でいうなら。
”凝固した後”に切開が必要です。
必ず凝固してください。円靭帯の裏には血管が走っています。
具体的な方法としては、テンションをかけて切るだけなのですが先に腹膜を切っておくと単離できて便利です。安全に手術をすることが出来ます。
円靭帯自体は出血しないので半分ほど切ってから腹膜を展開して、凝固切開でもよいです。
つまりパターンとしてはこの3パターンになります。
円靭帯処理 3パターン
①腹膜ごと凝固して切開
②円靭帯を半切開して、腹膜を展開し単離し凝固して切開
③腹膜を切開し、単離し凝固して切開
の3つになります。もう少し詳しく言うと
①:円靭帯をもってテンションかけて腹膜ごと円靭帯を凝固し切開します。切りきれないことも多いので2.3回繰り返さないといけないこともしばしば。
②:①同じテンション。切開モードで円靭帯を腹膜ごと一部切開。腹膜と円靭帯の間に鉗子を入れ剥離し腹膜を展開。単離し凝固切開。場所決めが最も大切。
③:まず円靭帯と骨盤漏斗靭帯の間の腹膜を切開。(その後円靭帯奥の腹膜も切開し、)円靭帯を単離し凝固切開。手間はかかるが一番安全。
結局どれがいいの?
一番安全で安定するのは③(腹膜をあけてから凝固切開)になります。
円靭帯とその裏の血管を単離できるので一番良いです。特に子宮動脈の上行枝や附属器系の血管を傷つけるリスクが減ります。
剥離せずに行うと、癒着の時や大きな子宮の時に血管が近くなって出血することがあります。
癒着も全くなく、急ぐなら①(腹膜ごと強くけん引して凝固)でよいかと思いますが腹膜は開けたほうがよりしっかりと切開でき、その後の広間膜腔の展開が楽になると思います。腹膜ごと切ると切り残しが多い印象があります。
ちなみに②と③の違いは円靭帯の切開場所の選択を腹膜展開前にするかどうかが一番大きな違いになります。これがわからない方は次の記事が役に立つこと間違いなしです。
次回は円靱帯の切開場所の決め方になります。
今日からやれること
円靭帯を切開時は、腹膜の処理をどのタイミングでするか考える。
まとめ問題
円靭帯切開の方法に関して、以下の選択肢から最も適切なものを選んでください。
- A. 腹膜ごと凝固して切開
- B. 円靭帯を半切開して、腹膜を展開し単離し凝固して切開
- C. 腹膜を切開し、単離し凝固して切開
- D. 凝固せずに切開
正解:C. 腹膜を切開し、単離し凝固して切開
解説:
円靭帯切開の方法は、以下の3つのパターンがあります。
- 腹膜ごと凝固して切開
- 円靭帯を半切開して、腹膜を展開し単離し凝固して切開
- 腹膜を切開し、単離し凝固して切開
この中で最も安全で安定する方法は、「腹膜を切開し、単離し凝固して切開」です。円靭帯とその裏の血管を単離できるため、子宮動脈の上行枝や附属器系の血管を傷つけるリスクが減ります。
剥離せずに行うと、癒着の時や大きな子宮の時に血管が近くなって出血することがあります。癒着も全くなく、急ぐ場合には腹膜ごと強くけん引して凝固する方法でよいかもしれませんが、腹膜は開けたほうがよりしっかりと切開でき、その後の広間膜腔の展開が楽になると思います。腹膜ごと切ると切り残しが多い印象があります。
次回、円靱帯の切るのってどこがいいんですか? です。お楽しみに。