前回は尿管同定が難しく感じる理由を説明しました。
コツを理解できれば”魔法みたい”に尿管を素早く同定することが出来ます。
今回は最もつまづきやすい、前方アプローチでの尿管の同定の仕方についてわかりやすく言語化していきます。
目次
すべてを網羅する3つの方法
前方アプローチにおける尿管の見つけ方は大きく三つあります。他のアプローチを普段行っている方にとって理解しやすい順番に並べるとこうなります。
・側方アプローチ型
・子宮動脈アプローチ型
・前方アプローチ型
この三つになります。(名前は勝手につけています)
側方アプローチ型
まず側方アプローチ型ですがこれは、広間膜腔の”外側”を開けて、頭側側で見つける方法です。側方アプローチに近しい考え方ですね。
側方アプローチと同じく、外腸骨を目安に外側を展開し尿管を動脈の交差部より頭側で見つけます。尿管を追っていき、子宮動脈を同定します。
”側方アプローチ”とは違うのは骨盤漏斗靭帯まで腹膜を開けなくて済むという点です。(”側方アプローチ”と前方アプローチでの尿管同定の方法としての”側方アプローチ型”で区別しています)
子宮動脈アプローチ型
次に子宮動脈アプローチ型ですが、その名の通り、子宮動脈を追っていく方法になります。
広間膜腔の”奥の基靭帯”に注目します。そして子宮頸管や基靭帯から子宮動脈を見つけて外側に追っていき、交差部あたりで尿管を見つけるわけです。
側方アプローチ型と比べて展開する範囲を増やさずに尿管を見つけるメリットがありますが、血管を剥いていく必要があるため出血のリスクがありやや慣れが必要です。
前方アプローチ型
これこそ前方アプローチの真骨頂ですね。なんと直接交差部を同定する方法となります。尿管と子宮動脈をほぼ同時に同定できる方法となります。
そんなこと可能なの?
ってなりますよね。少し慣れないと難しいのですが、わかりやすくかみ砕いていくので安心してください。身に着けるとかなり強力です。
手順としては、広間膜腔をこれまでの記事通りに後葉に沿って脂肪を外側につけるように、展開していきます。そして、基靭帯を一塊と考え外側に追っていくと、骨盤や尿管系の組織とぶつかるところで、後葉側に疎な結合式ありここを開けると交差部つまり尿管が見えてきます。
先ほどこの図で説明すると。青丸のすき間の部分です。
近景にしてメリーランドで持ち上げるとこのような視野になります。青の部分を広げると交差部となります。
広げた後はこのような視野になります。交差部が直接交差部を同定することが出来ました。
当院に来られ、この方法を始めてみた先生に
”魔法みたいに知らない間に交差部が出ていた”
と言われたことがあります。それぐらい慣れると魔法みたいにさっと交差部を同定し、TLHで最も大切といわれる、尿管と子宮動脈を同定を終わらせることが出来ます。
長くなってきたので、さらに詳しい説明はまた次回。
今日からできること
尿管を同定するためにどこから見つけるかを意識する。腹側の尿管?子宮側の子宮動脈?交差部?
まとめ問題
前方アプローチでの尿管の同定方法について、以下の選択肢のうち、正しいものを選んでください。
- 側方アプローチ型では、広間膜腔の内側を開けて尿管を見つける。
- 子宮動脈アプローチ型では、基靭帯を一塊と考えて内側に追っていく。
- 前方アプローチ型では、直接交差部を同定する方法で、尿管と子宮動脈をほぼ同時に同定できる。
- 子宮動脈アプローチ型では、尿管を見つけるために剥離範囲を増やす必要がある。
正解:3. 前方アプローチ型では、直接交差部を同定する方法で、尿管と子宮動脈をほぼ同時に同定できる。
解説: 前方アプローチでの尿管同定には、側方アプローチ型、子宮動脈アプローチ型、前方アプローチ型の3つの方法があります。
- 側方アプローチ型は、広間膜腔の外側を開けて、頭側側で尿管を見つける方法です。
- 子宮動脈アプローチ型は、子宮動脈を追っていく方法で、広間膜腔の奥の基靭帯に注目し、子宮動脈を外側に追っていき、交差部あたりで尿管を見つけます。
- 前方アプローチ型は、直接交差部を同定する方法で、尿管と子宮動脈をほぼ同時に同定できる。広間膜腔を後葉に沿って展開し、基靭帯を一塊と考えて外側に追っていくと、後葉側に疎な結合式があり、ここを開けると交差部が見えてくる。
- 子宮動脈アプローチ型では、尿管を見つけるための剥離範囲を増やさずに尿管を見つけることができるが、血管を剥がしていく必要があるため、出血のリスクがあり、慣れが必要です。
次回は前方アプローチ型での尿管を見つけるコツについて説明します。お楽しみに。