子宮傍組織ってどんなイメージですか?
何となく、走行がよくわからなくなったり、何の血管を処理しているのかわからなくなることってありませんか?
他にも、いつもなら出血しなかったのに、なぜか今回だけるだけで出血することはありませんか?
これらはすべて”あなたのイメージ”が悪いのかもしれません。
出血と戦う産婦人科。そんな産婦人科にとって、子宮の血流を止めることはどの産婦人科にとっても必要な技術です。あとから怖い思いをしないようにぜひイメージをつかんでいきましょう。
目次
子宮傍組織は”シャンパンタワーとグラス”
今回は、子宮傍組織を”シャンパンタワーとグラス”をメタファーにして考えてみましょう。
え?っと思いますか?ちゃんと理由があります。
皆さんは、最近記憶力落ちたなぁと思いませんか。私は絶賛実感中です。
基本的に人間の記憶力は低下していきます。嫌ですよね。
しかし、年を重ねるにつれ記憶力が低下していっても理解力が深まっていく人がいます。
それは、
これまでの知識やイメージに当てはめることが出来る人です。
いろんな知識や考えをコネクティングしていく。そうすることで新たな視点や深みが出てくるわけです。
なので、子宮傍組織をシャンパンタワーとグラス”で考えると、理解が深まり、今処理しているものを考えやすくなり全体感も把握することが可能になります。では本題に行きましょう。
シャンパンタワーのメタファー
シャンパンタワーのイメージはどのようなものですか?
グラスが積み重なり、上から下に広がっていくイメージですよね。結婚式などでみられるものですね。
これを子宮傍組織とつなげてみてください。
どうすればいいですか?
答えは、まず横にします。
そして子宮から骨盤に向けて行っていってください。
百聞は一見に如かず。今回イメージすべきシャンパンタワーはこちらになります。
はい、わけわからんですよね。雑コラですね。
これにわかるように名前を付けていくとこうなります。
見えてきましたか?つまり
子宮傍組織は子宮側の子宮動静脈から始まり、骨盤に向かってどんどん広がっていきます。
シャンパンメタファーのとらえ方
この画像を見て質問です。どこが危険ですか?
そうですね。
骨盤側(シャンパンタワーの下のほう)のほうが危険なものが多くないですか?
尿管、子宮動脈本管など傷つけてはいけない臓器がたくさんあります。
尿管にしろ、膀胱にしろ、動静脈にしろ骨盤側に行くにつれ危険なものが広がっていきます。
つまり、子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっているというイメージが出来ますね。
なるほど、子宮の近くで処理をしろ!と子宮全摘の初心者ほど言われるのはこういうわけがあるわけです。
シャンパンタワーでいうと、なるべく上のほう、つまり子宮側を触ると安全ということが丸わかりですね。
癒着の怖さとシャンパンタワー
癒着って怖いですよね。癒着により血管や尿管や膀胱、腸などの位置が変わり思いがけない出血や他臓器損傷のリスクが高くなり、手が震え、動悸がしてきます。
その怖い癒着をシャンパンタワーというふざけたメタファーでとらえてみましょう。
癒着によりシャンパンタワーには何が起こりますか?
たとえば、内膜症や腺筋症で後葉が引き連れている場合は、尿管が子宮によって来たりしますよね。
帝王切開後の場合は膀胱が吊り上がっていたり血管が引き連れていることがあります。
これを先ほどのシャンパンタワーで考えるとどうなりますか?
実は、癒着によりグラスの位置が変わるんです。
より具体的に言うと、グラス(尿管や血管)が上(子宮側)に変化します。
上で示した傍組織の画像は,じつはCS3回のTLHの画像になります。膀胱剥離後です。
そして、膀胱を処理する前の膀胱が吊り上がっている状態の画像はこちらになります。
膀胱の位置がかなり吊り上がっています。そのため、膀胱及び尿管が子宮に寄ってきていますよね。
つまり、シャンパンタワーで言うところの一つ子宮側に移動しているわけです。
これはかなり危ないですよね。せっかく安全と思っていた、シャンパンタワーの頂点近くで切除したのに、そこには尿管がいて損傷した。こんな悲劇的なことが起きてしまうわけです。
内膜症症例でも、仙骨子宮靭帯と思ったら尿管だったなんてこともよくある話ですね。
癒着があると組織の場所がかかわる。これをシャンパンタワーで考えるとグラスの位置が変わる!という風にとらえることが出来ますね。
グラスの位置を変えたい。
グラスの位置変えたくないですか?グラスの位置を変えれたらすごいですよね。
危ないグラス(臓器)はすべてシャンパンタワーの下のほう(骨盤側)に移動させれるわけです。
ここでグラスを安全な位置に変えれるのが”剥離”となるわけです。
↑膀胱をずらした後の図。
剥離をすることで組織(グラス)同士が離れ、シャンパンタワーのグラスの位置を変えることが出来ます。つまり子宮や切開ラインから離すことが可能になります。
具体的には
腹膜切除を行えば、前葉の場合は膀胱が離れ、後葉の場合は尿管が離れます。
広間膜腔を広げる、つまり腹膜や血管周囲の組織を剥離すると尿管や大血管が離れます。
このように、剥離を行うと、損傷してはいけない臓器や血管が離れる、シャンパンタワーでいうとグラスの下の段に行くわけです。
どうでしょうか、子宮傍組織と”シャンパンタワーとグラス”というイメージはつかめましたでしょうか。
わかりにくい場合は、扇のように広がっていくイメージを持ってもらえれば良いと思います。川が平地に向かうにつれて広がっていくイメージなどもよいと思います。
ぜひ、ものが広がっていき、そして癒着があると傷つけてはいけないものの位置がより子宮に近づくというイメージを持ってみてください。
皆様がより安全な手術が行えるますように。
次回は、傍組織の切開方法を2パターンで説明していきます。お楽しみに。
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まとめ問題と解説
問題1:
「シャンパンタワー」というイメージを使って説明された「子宮傍組織」はどのような特性を持つとされていますか?
- 上部ほど危険な部分が多い
- 下部ほど危険な部分が多い
- 全体的に危険な部分が広がっている
- 危険な部分は特定できない
答え: 2. 下部ほど危険な部分が多い
解説: 「シャンパンタワー」のイメージを用いて、「子宮に近いほど安全で、離れれば離れるほど危険が広がっている」と説明されています。
問題2:
癒着が発生した場合、どのような変化が「シャンパンタワー」に影響を与えるとされていますか?
- 危険な部分が子宮側に移動する
- 危険な部分が更に広がる
- 危険な部分が縮小する
- 危険な部分が固定される
答え: 1. 危険な部分が子宮側に移動する
解説: 癒着が発生すると、通常は安全とされる子宮側の部分にも危険な部分(尿管や膀胱など)が移動してくるため、予期せぬ損傷のリスクが増えると説明されています。
問題3:
剥離を行うと、どのような効果が得られると説明されていますか?
- 危険な部分が子宮側に移動する
- 危険な部分を「シャンパンタワー」の下に向かわせることができる
- 危険な部分が縮小する
- 危険な部分が固定される
答え: 2. 危険な部分をシャンパンタワーの下に向かわせることができる
解説: 剥離を行うことで、損傷してはいけない臓器や血管を安全な位置、すなわちシャンパンタワーの下へ移動させることができると説明されています。これにより、危険な部分を避けながら処理を行うことが可能になります。