婦人科でザクロと言えば、フルーツではなく仙骨子宮靭帯。
このザクロの本当の姿を知っていますか?
今回は”幻のザクロ”の正体と、その処理について説明していきます。
目次
仙骨子宮靭帯の解剖と幻のザクロ”
仙骨子宮靭帯の略語、”ザクロ”は、ラテン語で仙骨を表す ‘sacrale’ から来ています。
産婦人科医であれば、この略語ザクロに多少なじみがあると思います。
しかし、”ザクロ”の具体的な解剖は、実はそれほど一般的には認識されていません。
意外なことに、仙骨子宮靭帯の存在については否定する意見も存在します。
例えば、消化器外科の専門医とダグラス窩の処理について話すとき、仙骨子宮靭帯の取り扱いについて話題が合わないことがあります。
「仙骨子宮靭帯の処理はどうしていますか?」
「何もしていませんよ。そもそも仙骨子宮靭帯ってあります?」
・・・
驚きですよね?
実は、消化器外科領域から見ると、仙骨子宮靭帯は存在しない。つまり”幻”なのです。
その理由は、このザクロ(仙骨子宮靭帯)の本質が「腹膜の集合」であるからです。
具体的には、仙骨子宮靭帯は腹膜が肥厚して子宮頸管に付着している部分を指します。
このため、直腸領域に至ると、仙骨子宮靭帯は広がっていきただの腹膜になり、存在しない、すなわち「幻」となるのです。
言い換えれば、仙骨子宮靭帯の本当の姿は「腹膜」そのものなのです。
仙骨子宮靭帯の具体的な処理について
仙骨子宮靭帯=腹膜の集合体ということがわかれば、処理は簡単です。
基本的には腹膜を切っているぐらいの気持ちで切っても出血はしません。
ザクロの位置ですが、子宮を前屈させ、左右にやや傾けることでかなりわかりやすくなります。(詳しくは前回参照)
電気メスの凝固で切っても問題ないですが、奥(外側)に行くと子宮静脈上行枝があるため注意してください。
血管から逃がすため、切開しやすくするため、マニュピレーターは前屈にして押し込みながら切開していきます。
私自身の手順としては、目印のため、切開時の出血を抑えるためバイポーラで凝固したのち切開をしています。
画像の部位は人によっては高めと思われるかもしれませんが、これは膣縫合の時に縫いやすいようにあえて高めで切開しています。
内膜症の場合は、直腸が吊り上がっていることもあるため注意して切開しましょう。直腸損傷のリスクが高い症例では、やや子宮体部より切開を入れて腹膜ごと仙骨子宮靭帯をずりおろせると安全に切開を行うことが出来ます。
まとめ問題と解説
問題1:仙骨子宮靭帯は何の集合体でしょうか?
A. 筋組織
B. 神経組織
C. 腹膜
D. 骨組織
答え:C. 腹膜
解説:仙骨子宮靭帯は腹膜が肥厚して子宮頸管に付着している部分と説明されています。したがって、これは腹膜の集合体として認識されています。
問題2:仙骨子宮靭帯の取り扱い時、出血を防ぐために著者が採用している手順は何ですか?
A. レーザーを用いて切開する
B. バイポーラで凝固させた後、切開する
C. 切開せずに靭帯をそのままにする
D. 切開前に麻酔を使用する
答え:B. バイポーラで凝固させた後、切開する
解説:著者は、仙骨子宮靭帯の切開時に出血を抑えるため、まずバイポーラで凝固させ、その後で切開を行っています。