前回は作りたい腔の形があって、それに向かって展開していくという話をしました。
こんな形でしたね。
手前の円靱帯を切って、上蓋である広間膜前葉を子宮側で切開した、その後の話になります。
上蓋と聞いてもよくわからない人はこちらを参照してください。
今回は誰でもわかるような、前方アプローチにおける、広間膜腔の超具体的な展開方法について説明していきます。
広間腔の展開
①広間膜前葉の切開が終われば、まずは円靭帯の断端を頭側に引っ張り子宮を直線化します。
まずは円靭帯の断端を頭側に引っ張り子宮を直線化します。
この時子宮がねじれないように気を付けてください。ねじれがあると組織の場所がずれて損傷のリスクが高まりますし、腹膜がたわむ原因となります。
頭側にまっすぐに引っ張ることで広間膜後葉にテンションがかかります。この時は腹膜や円靭帯が裂けない程度に引っ張ってください。
②円靭帯近くの広間膜前葉を持ち上げ疎な結合組織をだす。
次に円靭帯を持ち上げます。具体的な引っ張る強さが気になりますよね。
”ジェントルな”とか”適切な”と情報量0の言葉でよく言われるやつです。
大丈夫です具体的に言語化していきます。具体的な引っ張るテンションは・・・
細かい血管から出血が出ないぎりぎりの強めのテンションとなります。出血があればそれひっぱりすぎですがテンションがかからないと切るべき層も見えてきません。
引っ張るテンションに関しては強めがいいです。
なるべく”ジェントルに”強く優しく”適切な”力で引っ張ってください。
そうすると、癒着がなければ疎な結合組織がガバッと出てきます。いわゆる”あわあわな層”ですね。見た目があわあわしていますね。
③リンパ管や毛細血管を切除していく。
次にリンパ管や毛細血管を切開していきます。太い血管は凝固してから切開してください。
”適切な”テンションをかけることで、突っ張ったところが見えてきます。
これはいわゆる”すじ”のようなもので。毛細血管やおそらくリンパ管であると思います。
これらを切っていくことで広間膜腔が展開していきます。
④疎な結合組織を外側になるべく付くように子宮側かつ広間膜後葉側で切開。
ゴールを覚えていますか?
ゴールは子宮と広間膜後葉がつるつるに向けたこの像でしたね。
この形にするためには、子宮側、そして広間膜後葉側で”すじ”を切開していきます。
いいですか。大事なので繰り返します、子宮側、そして広間膜後葉側で剥離していってください。
鈍的に押して行ってもいいですが、癒着している症例ではどんどん固まりを作ってしまい泥沼にはまってしまいます。
鋭的剥離と鈍的剥離に関して後日記事にしますが、基本は腹膜をうごかしたり、組織自体に軽く鈍的にちょんちょん触って安全な場所を探し、できれば鋭的に切開していくのがおすすめです。
より具体的な広間膜腔の展開の意味
大体のイメージがつかめましたか?
子宮と、広間膜後葉が出てくるように子宮側、後葉側で細い血管などの”すじ”を切っていけばいいという内容でしたね。
では少しだけより具体的にしていきましょう。
具体的に広間膜腔の展開を表現すると、”広間膜後葉に沿って展開していく”ということになります。
そしてさらにさらに、専門的な用語を使うと、広間膜腔の展開とは
広間膜後葉の腹膜下筋膜に沿って剥離していくこと
を指しています。
出ました、腹膜下筋膜!
以前腹膜の裏には”筋膜”があるという話をしました。(読んでいない方はこちら”広間膜の切り方と腹膜の本当の姿”)
当然、広間膜後葉にも筋膜があります。この筋膜の名前は腹膜下筋膜と言います。(この広間膜後葉の腹膜下筋膜についてはそれだけで一つの記事になるので後日記事にします。)
今回長くなったので、具体的に腹膜下筋膜に沿って剥離する方法については次回お伝えします。
まとめ
今回は広間膜前葉を切開した後の広間膜腔の展開について手順書のように説明しました。
さらに最後は、広間膜腔の展開とは広間膜後葉の腹膜下筋膜に沿って展開するという話をしました。
次回は、腹膜下筋膜に沿って展開するときのメルクマールについて具体的にお伝えします。お楽しみに。
今回は、前方アプローチにおける広間膜腔の超具体的な展開方法について説明しました。まず、広間膜前葉を切開した後、円靭帯の断端を頭側に引っ張り、子宮を直線化します。次に、広間膜前葉を持ち上げ、疎な結合組織を引き出します。適切なテンションとは出血がないぎりぎりの強いテンションです。リンパ管や毛細血管を切除しながら、疎な結合組織を外側につけるように子宮側かつ広間膜後葉側で切開します。ゴールは、子宮と広間膜後葉がつるつるになるような形状を作ることです。これを実現するために、子宮側、広間膜後葉側で「すじ」を切開していきます。展開の具体的な方法としては、広間膜後葉に沿って展開していくことになりますがそれはまた次回。