腟管切開① もうミスらない腟管切開「たった一つのうまくいく基準は”とあるイメージ”」

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なんだか今日膣をうまいこと切れなかったなぁ、前と何が違ったのかなぁ

TLH中にこんな風にモヤモヤした経験はありませんか?腟管切開はとあるポイントを押さえておくとすごくスムーズに進めることが出来ますが、一方でイメージが出来ていないとドツボにはまります。

もやもやが少しでもある方に必見の内容になっています。お見逃しなく。
ついにこのシリーズで子宮が”取れます”(笑)

腟管切開、たった一つのうまくいく基準

さっそく腟管切開におけるたった一つのうまくいく基準をお伝えします。それは

腟管の輪のイメージがある事

ちょっと抽象的でわかりにくいですよね。わかりやすく具体的に説明していきますね。

腟管の輪のイメージとセンス

腟管は筒になっていますよね。特に腟パイプやカップが入っていると円形の筒になっています。

TLHにおいて、立体的に円状に切開するのは実は腟管切開だけです。あとの血管や靭帯は集簇結紮や凝固して直線的に切開していきますよね。

そのため、腟管切開は他の手順よりも”センス”が必要な部分になります。

”センス”とはなかなか抽象的ですよね。深堀していきましょう。

”いいセンス”とは何でしょう。私が思う”いいセンス”とは認識などの入力後の”いい感じの出力”と考えています。

わかりやすく例えて言うなら、会話のうまい人って、相手からの言葉(入力)を受けて、適切な言葉や態度(出力)を伝えることが出来ますよね。これを会話での”いいセンス”と呼ぶと思っています。

例:仕事が向いているか悩んでて → 
×(食い気味にぶっきらぼうに)やるしかないやろ、俺ん時は・・・(自分語り)
〇(目を見て、ゆっくりと)悩んでいるんだね(共感)、何かあったの?(他人への興味)

例のように、同じ入力があったのにもかかわらず、二人の対応は全く違いますよね。出力の違いを”センス”ということが出来そうですよね。

では腟管切開における、入力と”いいセンス(出力)”は何でしょう。

入力は画面の頚部、腟、膀胱の視覚的情報ですよね。
そしてセンスのいい出力とは腟管の輪のイメージ通りに切開できることになります。

そのため、腟管を立体的に輪のイメージとしてとらえられる状態にしてから切開に移ることが、たった一つのうまくいく基準となるわけです。挟んで切るだけならだれでもできますからね。

経験が高くなると、腟管のイメージは剥離せずともわかってきます。膨らみ具合や模様で何となくわかってくるわけです。逆に経験が詰めていない状態ではなかなかイメージは見えてきません。
そのため、しっかりと剥離を行い腟管周りの処理をきれいに終えている必要があります。

腟管のイメージのとらえ方

腟管のイメージの大切さがわかったところで、そのとらえ方を見ていきましょう。
といっても、実はかなり簡単です。

カップや腟パイプの淵を見えるようにする。

これだけです。

前膣壁

後腟壁

そして横

この輪のイメージをつかむことさえできれば、子宮を切りたい方向と逆側にテンションかけて切るだけできれいな腟管切開が出来ます。

ギザギザになったり、切り込みすぎたり、逆に頚部が残ったりといった失敗がおこりにくくなります。

そのためしっかりと子宮傍組織を処理した後で輪のイメージを確認し、それから腟管切開を行ってみてください。きっとうまくいきます。

失敗パターン

これらにより、腟の場所や輪のイメージをとらえ間違って失敗しやすいので注意してください。

腟の輪のイメージ見誤りパターン

①頸管が伸びていて膣が思ったより奥にある 
 → 膣まで組織を処理できておらず、切開の時に組織が残って分厚くなる
 ☆よくあるのは閉経や巨大腫瘍で引っ張られているとき 

②子宮円蓋部と腟パイプやカップの大きさがあっていない時。
 → 頸部筋腫やナボット嚢胞で子宮円蓋部が大きくなっているとき
 or 個人特性や閉経で子宮円蓋部が小さくなっているとき

結局は、思ったより奥にある場合や円蓋部が小さい時にイメージとのずれにより起こるわけですね。

剥離できていないパターン

膀胱脚やザクロ(仙骨子宮靭帯周り)といった後ろ側がしっかりと処理できていないことが多いです。上記の①と同じくそうすると、前壁切開後に分厚く組織が残り、困難を極めます。

良いイメージと、失敗パターンを自分のものにして、”もう腟管切開に失敗しない”と自信もって言えるようにしてい行きましょう。

では次回はいま行っている具体的な切開方法について解説していきます。お楽しみに。

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まとめ問題

問題:

腟管切開において、以下の選択肢から、最も重要なポイントを選んでください。

A. 腟管の輪のイメージを持つこと
B. 腟管切開の手順を正確に覚えること
C. 腟管切開の前に膀胱脚とザクロを処理すること
D. 腟管切開のためのセンスを鍛えること

解答と解説:

正解は A. 腟管の輪のイメージを持つこと です。

この文章では、腟管切開における成功のために最も重要な要素は、「腟管の輪のイメージを持つこと」であると述べられています。腟管切開は他の手順よりもセンスと正確なイメージが必要であり、このイメージを持つことが切開を成功させる鍵とされています。

他の選択肢について:

B. 腟管切開の手順を正確に覚えること:手順の正確さは重要ですが、それだけでは腟管切開の成功には不十分です。イメージがないと手順の正確さも生かしきれません。

C. 腟管切開の前に膀胱脚とザクロを処理すること:これは後ろ側の組織処理に関する内容ですが、最も重要なポイントではありません。成功の鍵は腟管のイメージにあります。

D. 腟管切開のためのセンスを鍛えること:センスを鍛えることも重要ですが、それだけでは成功には足りません。センスを発揮するためにも腟管のイメージが必要です。

したがって、最も重要なポイントは「腟管の輪のイメージを持つこと」であるため、選択肢 A が正解です。

ごっそ

ごっそ

百名以上からベスト指導医に選出された8年目若手産婦人科医。研修医時代から腹腔鏡練習や動画メインでの復習を欠かさず、たくさんの失敗を乗り越え現在ダグラス窩閉鎖症例やキロ越えのTLH(RASH)を執刀中。日本産科婦人科学会の若手医員選出。教育を充実させる目的で情報発信を開始しています。

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