術野展開で気をつけるべきたった2つの原理原則

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今回は、術野展開で気をつけるべきたった2つの原理原則について解説していきます。

まず、術野展開について述べる前に、手術で絶対に欠かしてはダメなこと

それは、愚直に安全に手術を終了することです。

そんなの当たり前だと思いますよね。では、毎回毎回ちゃんとめんどくさがらずにできてますか?
一度失敗して、修正しても少し経ったらまた同じ失敗を繰り返す。そんなこと起きてませんか?

術野展開は手術の安全性を担保するための一番大切な要素です。
前立ちが変わると手術がうまくいかなくなったりしませんか?それを前立ちのせいにしていませんか?

術野展開も含めて全て自分の責任です。その術野展開を理解するには根本であるたった2つの原理原則がわかれば大丈夫です。

対象としては初心者〜中級者がメインですが、上級者でもこの二つに場合分けできている人は少ないでしょう。必見です。では早速いきましょう。

術野展開で気をつけるべきたった2つの原理原則

術野展開で求められている目標はたった二つに絞ることができます。

①見たい組織を見れるようにする
②処理したいしたい組織を処理できるようにする

細かく見ていきましょう

①見たい組織を見れるようにする

視野の展開なのでこちらはすごく理解が簡単だと思います。

例えば、腹腔鏡下腟式子宮全摘術(TLH)において仙骨子宮靱帯(ザクロ)の処理をする場面になったとします。

この時、ザクロは子宮の頸部後面についているので
子宮を上げる→腸をどけることで見ることが可能になります。

Screenshot

あたりまえ体操ぐらいあたりまえですね。

②処理したいしたい組織を処理できるようにする

①の見れるようにするというのは簡単でしたが、②の処理したい組織を処理できるようにするというのは少し難しいです。

観察するだけなら、目の前のものをどけるだけで良かったです。
しかし、ここに”処理をする”ための展開となると難しくなります。つまり、処理ができる空間、角度とテンションを取る必要が出てきます。

特に、腹腔鏡での手術ではポートの位置が決まっており、また鉗子も真っ直ぐなので組織を動かして処理できる角度を作らないといけません

腹腔鏡下腟式子宮全摘術(TLH)での仙骨子宮靱帯(ザクロ)の処理

腹腔鏡下腟式子宮全摘術(TLH)において仙骨子宮靱帯(ザクロ)の処理をする時を考えてみましょう。

観察するだけなら、子宮をあげて腸をどけるだけで良かったです。
しかし、ここに”処理をする”ための展開となると難しくなります。つまり、把持ができる角度とテンションを取る必要が出てきます。

ザクロの処理では、前屈(アンテ)させたマニュピレーターの角で引っ掛けてテンションをかけた上で、鉗子が掴みやすい角度になるように動かす必要があります。

腹腔鏡下腟式子宮全摘術(TLH)での広間膜腹膜の切開

腹腔鏡下腟式子宮全摘術(TLH)において広間膜腹膜前葉の切開をする時を考えてみましょう。

観察するだけなら特に何もしなくて良いです。まぁヘッドダウンして腸をどかしたり、後屈の子宮を真っ直ぐにする必要はあるかもしれません。

実際切開するには子宮を押し込み、腹膜を程よくいい場所に持ち上げる必要があります。これは、処理するためには角度とテンションが必要だからです。

例えば、TLHにおいて腹膜を切開する時に腹膜は右手の鉗子と垂直に当たるように上に引っ引っ張ります。例えば、変に奥に引っ張ると切開する角度が取れません。

そして引っ張り具合としては、細い血管が切れないぐらいのテンションでぐっと引っ張ります。テンションをかけないと綺麗に切開できません。

よくあるミスや注意点

よくあるミスや注意点として、

見えているが、処理できる展開ではない

ということがよくあります。引っ張る向きが悪かったり、引っ張り方が甘かったりします。

・見えているのにうまくいかない時
処理できる展開を目指して、鉗子の方向を確認して処理しやすい方向考えて展開してみましょう!

・チェックポイント
そもそも子宮の向きは合っているか
子宮は捻れていないか
いつもと違う場所に腫瘍がないか
ポート配置的に手が入らない位置ではないか
力はしっかりとかかっているか

ここら辺を見てみましょう。

まとめ

今回は視野展開の原理原則二つに絞って解説しました。

①見たい組織を見れるようにする
②処理したいしたい組織を処理できるようにする

聞いてみればあたりまえですが、この二つを認識して手術している人は少ないと思います。

次からは、腹腔鏡手術(TLH)とロボット支援下手術(RASH)における展開の違いについて解説していきます。

更新の通知はXにて行います(X)。ではまた!

練習問題

問題: 術野展開において、次のうち正しいものはどれですか?

  1. 観察するだけの場合、組織の処理を意識する必要はない。
  2. 腹腔鏡下手術では、ポートの位置に関係なく、どの角度でも処理が可能である。
  3. 見えている組織があるならば、そのまま処理に進んでも問題ない。
  4. 組織を処理するためには、適切な角度とテンションを確保する必要がある。

正解: 4. 組織を処理するためには、適切な角度とテンションを確保する必要がある。

解説: 観察だけではなく、実際に組織を処理するためには、角度とテンションを適切に調整する必要があります。腹腔鏡下手術では特にポートの位置が固定されており、適切な処理角度を作ることが重要です。他の選択肢は、観察と処理の違いを理解していないか、誤った手術手技を示しています。

ごっそ

ごっそ

百名以上からベスト指導医に選出された8年目若手産婦人科医。研修医時代から腹腔鏡練習や動画メインでの復習を欠かさず、たくさんの失敗を乗り越え現在ダグラス窩閉鎖症例やキロ越えのTLH(RASH)を執刀中。日本産科婦人科学会の若手医員選出。教育を充実させる目的で情報発信を開始しています。

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