「ここ、どこ切る?」と迷ったら三角形を探せ!切開ラインの大原則

3 min

キレるラインがわからない、どこから剥がすべきか…

術中と手が止まったこと、ありませんか?ありますよね???

解剖書を読んでも、教科書的な層の名前はあれど、実際の視野はもっと複雑。どこが膜で、どこがただの癒着なのか。そう、現場では教科書は黙っています。

上司はこう言います。

「適切な、テンションをかけると自然と見えてくるラインだよ」

それがどこかわからないんだよ!!

でも、もしも目の前に“ヒントの形”が現れていたとしたら?

何も迷いなくズバズバ切れる。そんな秘密知りたくないですか?

そう考えると、ちょっと面白くなってきませんか。

この記事では、術中に見える秘密の扉「三角形」が剥離層のガイドになる理由と、その活用法について解説します。

三角形は自然がくれた層のサイン

まず一言でまとめましょう

ズバズバ剥離したいなら、三角形を探せ!になります。

「三角形は、膜と膜に囲まれた“ゆるいゾーン”の地図」です。もう少し具体的に説明しましょう。

これには、剥離ゾーンに関する知識が必要になります。

剥離するラインは接着剤のライン

基本的に体は、膜や層構造になっています。

まるで玉ねぎみたい

さまざまな層が重なって人体が構成されています。

子宮:筋層、漿膜・・・
腹壁:腹膜、脂肪層、筋膜、筋肉、筋膜、脂肪、浅筋膜、脂肪、真皮、表皮

そしてその間には、接着剤となる疎な結合組織が存在します。

疎な結合組織が切れるライン=剥離ライン

となります!

そしてこの、「膜間層(膜と膜の間のゆるい結合組織)」を象徴しているのが三角形なのです。

参照リンク↓

三角形を構成するものは?

三角形の三辺はそれぞれ独立した“膜”でできていています。

そして三角形の中はふわっとした結合組織。

つまり、

三角形の中は“剥がしても安全な空間”

言い換えれば“自然が用意してくれた安全な道”なんです。

ハサミやバイポーラーで軽く触れればスーッと剥がれてくれる、あの「気持ちいい」層。

しかもこの“あわあわ”ゾーンは、構造的に血管や神経が走っていないことが多く、

いわば“ローリスク剥離ゾーン”

無理に牽引して破くのではなく、三角形の中にそっと入り込んで拡げていくと、自然に展開が進んでいくのです。

実際やってみよう!!

次の円靭帯の切開時の画像をみてどこに剥離のできる三角形があるかわかりますか?

大きな三角形を作ってみてください

ヒントは切開された円靱帯が一辺になります・

そうです!これはわかりますよね!!

三辺は以下のようになります

①切開された円靭帯(広間膜前葉)
②骨盤側の腹膜
③骨盤漏斗靭帯側の腹膜

では、もう少し解像度を上げた三角形を作りましょう

そうするとこうなります。

もはや無限にできそうですね。今回は円靭帯間膜が一辺になっていますね。

では次の画像をで大きな三角形を作ってみてください

ヒントは腹膜ですね。

これも簡単ですね。

3辺は

①広間膜前葉
②広間膜後葉
③骨盤壁

と言う大きな三角形になります。

次はできるだけ小さな三角形をみてみましょう

これだけたくさんの剥離の腔(層)が出てきます。

どのルートを取るかはまた別の話になりますが、三角形を意識すると術や認識が大きく変わるのがわかりますよね。

解像度に関しては↓参照

三角形は「見つける」より「浮かび上がらせる」

注意点もあります。三角形は、いきなりは見えません。繊細な牽引、丁寧な圧排、そして「膜を膜として尊重する」姿勢が必要です。

強引な操作では、膜が破れて三角形は跡形もなく消えてしまいます。

術野の中にじっと目を凝らして、細かいラインを読む。

すると、ほんのわずかな光の反射や牽引の方向で、膜と膜の「接し方」が変わり、三角形が“浮き上がって”くるのです。まるで3D映像のように。

これを感知するには、経験も必要ですが、何より「形に注目する」という視点が大事。

解剖学的名称ではなく、「形」で理解する。これが、迷子になりがちな術野の中で、あなたを導く新しいナビになります。

「適切な、テンションをかけると自然と見えてくるラインだよ」

この言葉の意味が分かりましたでしょうか??

まとめ

「どこを剥がせばいいか迷ったら、三角形を探せ」

この言葉は、もはや私の座右の銘です。膜と膜が自然につくる三角形は、剥離の層そのものであり、中の“あわあわ”こそが進むべき安全地帯です。見つけ方のコツは、強く引かず、よく観察し、少しずつ広げていくこと。形が教えてくれるルートを、信じて進んでみてください。

もし次の手術で迷ったら、「三角形、ないかな…」と心の中でつぶやいてみてください。きっと術野が変わって見えるはずです。

問題

問題
手術中に膜と膜に囲まれた三角形が見えた場合、その中の構造として最も適切なのはどれか?

A. 密な結合組織(dense connective tissue)
B. 骨膜
C. 疎性結合組織(loose connective tissue)
D. 平滑筋層

解答
C. 疎性結合組織(loose connective tissue)

解説
三角形に囲まれた領域は、通常膜と膜の間に存在する疎な結合組織であり、水分を多く含む柔らかい構造。これは“剥離しやすい層”として、血管や神経のリスクが低く、手術的に展開しやすいゾーンである。Aは靱帯などの構造、BやDは膜層の外に存在するため不適切。

ごっそ

ごっそ

百名以上からベスト指導医に選出された8年目若手産婦人科医。研修医時代から腹腔鏡練習や動画メインでの復習を欠かさず、たくさんの失敗を乗り越え現在ダグラス窩閉鎖症例やキロ越えのTLH(RASH)を執刀中。日本産科婦人科学会の若手医員選出。教育を充実させる目的で情報発信を開始しています。

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