広間膜腔の展開① 広間膜腔の箱イメージと円靭帯切開との秘密の関係 

3 min

”初めに円靱帯を完全に切断する”

ここに疑問を持った方はいるのではないでしょうか。初めに円靭帯を切る理由は何でしょうか?

その理由はズバリ

広間膜腔の展開が圧倒的にやりやすいためです。

その理由を具体的にかなりかみ砕いてお伝えしていきます。

広間膜腔を作るもの。

広間膜腔を展開するには広間膜腔を知らないといけません。

魚を捌くには魚に骨と皮と肉と臓器があると知っておかないと、捌くときにぐちゃぐちゃになりますよね。

それぐらい手術に関して構成している要素を把握するということは大切になってきます。

ではいきましょう!広間膜腔とはっ!!!

広間膜を広げた時にできる腔”です。

・・・・

当たり前ですね。今言っているのは、魚は鱗のついた皮に包まれています。ぐらいのものです。もう少し解像度を高めて話をしていきましょうか。

広間膜腔とは 

”広間膜前葉と後葉の間の組織を広げた腔”

やっと、”魚とは鱗と皮とヒレがついたもの”ぐらいの解像度ですね。

ではぐっっと解像度を高めてみましょう。

広間膜腔とは

”広間膜前葉と後葉を広げ、子宮と基靭帯と骨盤壁と円靭帯(附属器)の間に作った腔”

・・・

ゲボ吐きそうですよね。イメージ沸きにくっ!!

大丈夫です。一つづつみていけば必ず理解できます。

ここが理解できているかどうかでこの前方アプローチができるかどうか大きく変わってきます。

ここまでくれば、魚の内臓がどこにあり、骨がどのようにあり、どうして三枚おろしができるのかというぐらいの解像度となります!変わってしまえば簡単なので一緒にがんばりましょう。

ちなみに広間膜腔は広げた腔や作った腔とずっといっているのは、

本来広間膜腔は人体には存在しないためです。広間膜を抜けて、前葉と後葉を上下に広げて初めて出てくるのです。

広間膜腔は自分で作っていくという心持が大切です。

では広間膜腔の具体的なイメージに移っていきましょう。

広間膜と箱の関係

広間膜腔はそもそも存在しませんと言いましたが、ここではあえて広間膜を切らずに広間膜腔を作ってみましょう。

前葉と後葉の間にぷくっと空気を入れるイメージです。

そうするとどのような形になりますか?

いろいろ考えられますが、ここでは広間膜腔はこのような箱と考えてください。

左壁が骨盤壁、奥壁が基靭帯、右壁が子宮、手前が円靭帯と附属器。これらの壁の上下を前葉と後葉で蓋をしている。

展開図でイメージするとこんな感じ

これが前方アプローチにおける広間膜腔となります。もう少し立体的にするとこうなります。

広間膜前葉と後葉を広げ、子宮と基靭帯と骨盤壁と円靭帯(附属器)の間にできた腔

の意味を何となく理解できたでしょうか。では本題にいきましょう。

なぜ円靱帯から切断するのか

昔なぜ円靭帯から切るのかをボスに聞いたことがあります。

答えは

「その方が広がるから。」

でした。今考えると確かにそうなんです。

が、それはこの円靱帯を先に切ることの真意というにはかなり荒い説明でした。

ここではもう少し解像度を高めた言い方をします。

「円靱帯を切り、広間膜前葉を広げることで残りの子宮、基靭帯、尿管が綺麗に把握できるから。」

はい、わけわからんですよね。怒らないでください。

ちゃんとわかりやすく説明します。

先程の箱がありましたよね。広間膜腔の箱です。

それの手前の壁(円靭帯)をなくし、上蓋(前葉)を開けるととどうなりますか?

残り4面になりますよね。

左壁が骨盤壁、奥壁が基靭帯、右壁が子宮、そして底が広間膜後葉。

少し箱の形にするとこうなります。

ここまで行くと勘のいいひとであればわかるかもしれません。

実は、先に円靱帯と広間膜前葉を開けることで、知りたかったものが見えてきます。

もう少し詳しく言うと、

尿管(骨盤壁)子宮動脈(基靭帯の上縁)上行枝(子宮)が丸見えになる訳です。

逆行性に考えると

子宮動脈と尿管知りたい→円靭帯と前葉をあけたい→まずは手前の円靱帯を切らないといけない

という論理展開になる訳です。これが円靭帯から切る理由になります。

実際の手術でどのように見えるか

これは左の円靭帯を切除し広間膜前葉を展開した後の図になります。

いったん、立体的に奥行きをもって見てください。

左壁が骨盤壁、奥壁が基靭帯、右壁が子宮、そして底が広間膜後葉。

・・・

見えてきましたか?

このように見えればイメージは完璧です。

しっかりとイメージできましたか?

今日からできること

箱のイメージをもって広間膜腔をとらえてみる。

まとめ問題

以下の選択肢の中から、円靭帯を先に切断する最も重要な理由を選んでください。

  • A) 広間膜腔の展開がやりやすくなる。
  • B) 子宮動脈の血流が確保される。
  • C) 広間膜後葉の展開が容易になる。
  • D) 尿管の損傷リスクが低くなる。

正解: A) 広間膜腔の展開がやりやすくなる。

解説: 円靭帯を先に切断する理由は、広間膜腔の展開が圧倒的にやりやすくなるためです。円靭帯と広間膜前葉を開けることで、残りの子宮、基靭帯、尿管が綺麗に把握できます。これにより、尿管(骨盤壁)、子宮動脈(基靭帯の上縁)、上行枝(子宮)が丸見えになり、手術が容易になります。

最も重要という意味でAが意味を包括しているため正解となります。

今回説明した”箱のイメージ”はめちゃめちゃ大切なイメージなのでぜひ自分のものにしてください。

次回は”広間膜の切り方と腹膜の本当の姿”となります。お楽しみに。

ごっそ

ごっそ

百名以上からベスト指導医に選出された8年目若手産婦人科医。研修医時代から腹腔鏡練習や動画メインでの復習を欠かさず、たくさんの失敗を乗り越え現在ダグラス窩閉鎖症例やキロ越えのTLH(RASH)を執刀中。日本産科婦人科学会の若手医員選出。教育を充実させる目的で情報発信を開始しています。

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