縫合の原則② 創部の減張

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前回の続きです。前回は層を意識して、同じ層を合わせようという話を具体的なアクションプランと共に紹介しました。

今回は原則②、創部を減張するに移っていきましょう。

原則②:創部を減張させる

二つ目の原則は・・・”創部を減張させる”になります。まずは原則①の創部があっていることが前提になっています。

”減張”ってイメージしにくいですよね。イメージは、傷口がぎゅっとくっついている状態にするでよいと思います。

基本的に縫合した創部が開くようなテンションはダメです。

傷がずっと開くような状態だとなかなかくっつきませんし、くっついたとしても破綻しやすい状態になってしまいます。


縦切りの腹部の切開で、下端(足側)が一番分厚くなっている患者さんを見たことがあると思います。

あれは、重力でたわんだ創部が開く力がかかり下端が分厚く治っているわけです。

減張はかなり大切な要素になってきます。では次に、どうすれば減張できるのか、具体的なアクションプランに移りましょう。

例えば、皮膚であれば、表面にテープを貼ることで動きによる開きを和らげる、ことが出来ますよね。


他の組織でテープが張れないところや、薄くてどうしようもない場合はどうすればいいのでしょうか。一般化してみましょう

創部を減張する具体的なやり方

①層をたくさん縫合する

一点に力が加わると、当然かかる力も強くなりますよね。

何層にも縫合すると力が分散され減張することが出来ます。

わかりやすい例を挙げるならば、家の柱を思い浮かべてください。

家の柱を増やせばより強固になりますよね。これと同じです。

先ほどの表面にテープを張ることも同じ原理ですね。

例えば皮下脂肪は2cm以下であれば浅筋膜の縫合は必要ないという報告がありますが、縫合したほうがより減張にはなります。

減張を狙うなら、層を多くとるようにしてください。

②縫合する層を選別する

層をたくさん合わせるにも、合わせてよい層と合わせるとよくない層があります。

例えば、皮膚であれば真皮は固い組織なので(前後の脂肪と表皮と比べて)真皮を縫合するときに強く合わせることで表皮や脂肪層の減張になります。

逆に、脂肪層をかけると圧迫で脂肪が溶けてしまい炎症が生じて逆に創部の直りが悪くなります。

一方で、硬いところは強く引っ張っても避けることがないので強く合わせることが出来ます

腹膜を取るときも、腹膜裏の筋膜を取ることで強く縛ることが出来ます。

つまり、脂肪や、穿刺してはいけない臓器を避け、なるべく丈夫な組織を多く縫合することが大切なになります。

③より多くの組織を取る

取ってはいけない層をさけて、より多くの層を取るよい縫合層の選択が出来れば、最後はその層自体の取り方になります。

層の組織を取るときは、より多くの組織を一塊になるように運針するとよいです。

当然ですがちょっと取るよりも幅広くとったほうが、

より幅広い範囲で力が分散されるため創部の減張になります。

二つの原則

以上となります。二つの原則、

①同じ層を合わせる
まず層を知る、層が見やすいように展開する、層同士を縫う
②創部の減張する
層をたくさん縫合する、運針で硬いところを強く合わせる、より多くの組織を取る

をイメージして縫合に挑んでみてください。次は腟断端の具体的な縫合について第二原則に基づいて説明していきます。お楽しみに。更新はXで告知していますのでよければフォローをお願いします。

まとめ問題と答え

問題:
テキスト「創部を減張させる」に関する次の記述のうち、最も正しいものを選びなさい。

A. 減張は、創部のテンションを最小限に抑え、早期の治癒を促進する技術である。
B. 縫合する際には、創部の全ての層を均等に縫合するのが最適である。
C. 縫合においては、特に脂肪層の縫合が重要であり、これが減張の鍵である。
D. 層を多く縫合することで力が分散され、創部の減張を達成できる。

答え:
D. 層を多く縫合することで力が分散され、創部の減張を達成できる。

解説:
提供されたテキストによると、創部の減張は創部が開かないようにすることが目的であり、これには複数の層を縫合することが効果的です。これにより、縫合された部分にかかる力が分散され、創部の開きを防ぐことができます。選択肢Aは正しいが、減張の技術の一般的な説明に過ぎず、選択肢BとCはテキストに基づいていないため、不正確です。したがって、最も正確な答えは選択肢Dです。

ごっそ

ごっそ

百名以上からベスト指導医に選出された8年目若手産婦人科医。研修医時代から腹腔鏡練習や動画メインでの復習を欠かさず、たくさんの失敗を乗り越え現在ダグラス窩閉鎖症例やキロ越えのTLH(RASH)を執刀中。日本産科婦人科学会の若手医員選出。教育を充実させる目的で情報発信を開始しています。

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