今回は、私が卵巣機能を温存するためにこだわってやっているLC(腹腔鏡下の卵巣腫瘍核出術)の術式を記載します。
記載と言ったのは、この記事ではガッツリ術式だけを記載していきます。
他の施設でLCをどのようにやっているか 気になりませんか?
かなりこだわりのある術式ですが見やすいように、シンプルに記載します。
LCなんて初心者の術式なんじゃない?と思いますよね。
確かに、出血がしにくいといった理由で早めにやることが多いですが、卵巣機能を温存するという意味合いではかなり重要で気を遣う手術になっています。
この記事を読んでLCがうまくなれば、以下の大きなメリットが得られます。
・卵巣機能を温存できる
・術中破綻のリスクが軽減する
・術後出血がなくなる
・妊娠につながる!!
TLHなどは認定医ビデオの題材にもなっているので詳しい解説が多いですが、逆にLCの解説は逆にすくなく珍しいのではないでしょうか。
卵巣腫瘍は女性の生殖健康に影響を及ぼす可能性があるため、この手術は患者様の質の高い生活を支えるために不可欠です。お見逃しなく。
目次
セッティング
ポート配置とトロッカーの選択
基本的にLCは20-30代の若い女性が対象となることが多いです。そのためダイヤモンド配置を希望される方が多いです(患者さんに選んでもらっています。)
また、整容性を考慮して傷をなるべく小さくするために、左手ポートと助手ポートには3mmトロッカーを使います。
執刀医の右手も3㎜にしたいのですが、使えるデバイス制限が大きいのでここは5mmトロッカーでやっています。
ただ、癒着が強い症例は腸損傷のリスクや他臓器損傷のリスクを考慮して全て5mmトロッカー+パラレル配置で行っています。
エネルギーデバイス
電気メスで行っています。
刃先で剥離をするときがあるのでシザーズ(ハサミ)型の鉗子にモノポーラーコードをつけて行っています。
卵巣腫瘍核出術の基本手順
①切開ラインを決定する
切開ラインはズバリ「卵管の対側で固有策から遠い部分」になります。
腫瘍の大きさを見て赤道ライン(腫瘍の一番大きな径)を通れる切開の大きさにします。
②卵巣表面の切開
電気メスの凝固で表面を凝固します(CUTですると穴が開きます)。
凝固した部分を鈍的に裂いて卵巣表面を切開します。
③層の同定
卵巣と卵巣腫瘍の間の層を同定します。
つるつるの層が出てこれば正解です。入りやすいところではなくつるつるしたところです。(卵巣実質に入っていることがある)
④卵巣腫瘍の剥離
卵巣腫瘍の実質が残るように、かつ腫瘍が破綻しないように剥離をしていきます。
③で見つけた層を広げていきます。
剥離は一方向を深くするのではなく、幅広く全周性に行っていきます。
⑤切開の追加
剥離が出来れば必要に応じて切開を追加していきます。
この時、電気メスを使わなくてもよいです。コールドで切ったほうが破綻はしにくいです。
ただ、手前に切るときは②の切開方法と同じく、凝固し裂いて切開を追加していきます。
⑥卵巣の皮をひっくり返す
腫瘍の大横径(一番広いところ)まで剥離と切開が進めば、次は皮(卵巣実質)をひっくり返します。
(個人的には、この大横径を”赤道ライン”とかってに言っています。赤道という言葉を使うことで上下の意識が生まれます。)
手首を回外(開いていく)しながら、裏返すようにずりおろします。
もし切開が足りない場合は、無理をせずに剥離と切開に戻ってください。
⑦栄養血管を処理
卵巣腫瘍の栄養血管は骨盤漏斗靭帯側から来ています。
そのため、⑥の工程が終わり南半球にくれば(勝手に呼んでます)栄養血管が通っていると考えながら剥離を進めていきます。
具体的には、鈍的に引きちぎるのではなく、細かい血管の凝固をしながら、テンションをかけ過ぎずに鋭的に切開します。
⑧卵巣腫瘍核出と止血の徹底(+縫合)
栄養血管は骨盤漏斗靭帯側にあり、それを避けるために切開ラインは骨盤漏斗靭帯の反対側になっています。
そのため、⑦の栄養血管の処理がうまくいかなかった場合は出血が、核出後の袋状の卵巣の”底”におこります。
そのため止血が難しくなることが多いですが、展開を助手+重力と共に行い、出血点をしっかりと同定し止血します。
ここで止血を雑に行うと卵巣内に血種が起こります。
縫合はどちらでもよいみたいですが、私は元の形にしたいので縫合しています。
以上になります。詳しい方法やコツは随時記事にしていきます。
チョコレート嚢胞ではやり方が変わってきます。
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まとめ問題と解説
問題:
卵巣腫瘍核出術における切開ラインの決定方法について正しいのはどれか?
A. 腫瘍の一番小さな径を通る切開の大きさにする
B. 卵管の対側で固有策から近い部分にする
C. 卵管の対側で固有策から遠い部分にする
D. 卵巣表面の最も薄い部分にする
正解:
C. 卵管の対側で固有策から遠い部分にする
解説:
卵巣腫瘍核出術において、切開ラインは腫瘍と関連する解剖学的構造に配慮して決定されます。この手順では、切開ラインを卵管の対側で固有策から遠い部分に設定することが推奨されます。このアプローチは、腫瘍を適切にアクセスし、取り除くために必要な視界と操作空間を確保するためのものです。また、腫瘍の大きさを見て、その一番大きな径(赤道ライン)を通れる切開の大きさを選定します。これにより、手術中に腫瘍を効果的に扱えるようになります。選択肢Aは誤りです、なぜなら切開の大きさは腫瘍の一番大きな径に基づくためです。選択肢Bは切開ラインの決定方法に反しています。選択肢Dは切開ラインの決定基準としては適切ではなく、卵巣表面の最も薄い部分ではなく、解剖学的位置に基づいて決定されます。