手術中、「もう1本手があったらなぁ」と思ったこと、ありませんか?
そしてきっと、その手は「右手」ではないでしょうか?
ずっと手術を見ていた私が見つけた、うまくいっている執刀者とうまくいっていない執刀者の違いがあります。
なんとなく展開がうまくいかないと悩んでいる方、後輩指導の言語化に困っている方、さらにうまくなりたい方は必見です。
この記事でわかること:
・手術における“展開”の決定的コツ
・視野が崩れない助手の使い方
・なぜ「右手」を渡すのが正解なのか?
目次
展開は「右手を渡す」が正解
なぜ展開するのか
それは剥離や凝固切開を行うためです。
広間膜の腹膜を持ち上げることで広間膜腔が広がり、あわあわや毛細血管が見え、奥にある尿管や子宮動脈を見つけていくのです。
つまり、触りたい腔を作り、その奥を操作するわけです

絶対ルール
展開で迷ったら、まずこのルールを思い出してください。
「両手で開いて、右手を助手に渡す」
つまり、両手の鉗子で展開したのち、右手の鉗子で持っていた部分を持ってもらう。これだけで視野の安定度がぐんと上がります。
なぜ左手鉗子側じゃダメなのか?理由は単純です。
左手鉗子側を渡してしまうと視野が崩れてしまうからです。
展開後にやることは、右手で操作をします。
上記の通り触りたい腔を作り、その奥を操作するため、両手で触りたい腔を作り、その奥を右手で操作するため、右手をフリーにする必要があり右手の組織を助手に持たせるといい訳です。
ポテチ袋に学ぶ展開術
イメージがしにくい時はポテチ袋を考えてください。
みなさん、ポテチ好きですよね。どのように中のポテトを食べますか?
袋を開けて食べますよね。
これをもう少し解像度を上げてみましょう。
両手で袋を開け、右手を離してポテチを取るということができます。
普通に持ってもいいのですが、この時に、袋をうごかざすにポテチを取り出すにはどうすればいいでしょうか。右手を離すので右手の袋の端を固定する必要がありますよね。
ではここで助手を呼びましょう笑
あなたが助手と一緒にポテチの袋を開けて右手でポテチを取るとします。
まず、両手で袋を開けますよね?
このとき、どちらの手の端を助手に持たせますか?
右手ですよね。
なぜなら、左手で持っていても、結局は右手で中身を取るからです。
手術もまったく同じで、「開いた後、右手で奥を操作する」という行動が前提になります。
だからこそ、右手側を助手に任せれば、自分は左手で手前を持ちつつ、視野を保ったまま右手で自在に動けるのです。
ミリ単位の配慮が、術者の未来をつくる
こうした細やかな展開の工夫は、術者としての信頼を積み上げる土台となります。
助手に「この人の視野は崩れないな」と思ってもらえたらしめたもの。
「先生の展開綺麗ですよね」と言われたら、もう勝ちです。
たった一つの意識が、手術の質を左右することもあります。
だからこそ、両手で展開し、右手を助手に預ける。この原理原則を、明日からでもぜひ実践してみてください。
まとめ
手術の展開で迷ったときは、まずポテチの袋を思い出してください。
両手で開いて、右手を助手に渡す。それだけで視野は安定し、動線はシンプルになります。
展開がうまくいけば、術者の動きもスムーズに、術野も美しく保たれます。
助手とのコンビネーションが決まる瞬間――それは、小さな工夫の積み重ねから。
次の手術からぜひ、「その手、右手でお願いします」と心で唱えてみてください。
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問題
手術中の展開操作において、「右手を助手に渡す」ことの主な利点はどれか?
A. 視野を助手にまかせきれるから
B. 左手でより繊細な操作ができるから
C.術野が崩れることなく術者が右手で奥を操作しやすくなるから
D. 助手が操作の主導権を持つことになるから
解答:C
解説:術者は通常、右手で奥を操作する。そのため、右手の持ち位置を助手に預けることで視野が崩れず、術者の操作性も保たれる。左手を渡すと、持ち替えなどで視野が不安定になるリスクがある。