誰も教えてくれなかったTCRの真髄を徹底解説。満点技術認定医が教える3STEP #1めくる時に輪を乱さない

3 min

TCRは特殊技術だと思っていませんか?

実はちゃんと理解しコツさえわかれば、何も難しい手術ではありません。


抽象化すれば、やっていることは他の手術と同じ。安全マージンを取りながら、剥離し、切るだけ。

ただ、大きな大きな違いが一つあります。

それは・・・

手が一本であること。

まさに一本槍。これで戦えるのか・・・?

大丈夫です!

今回、技術認定73/80で合格した私の秘伝のコツを全てお伝えします
(お一人の審査員からはありがたいことに文句なしの満点とのコメントをいただきました。)


TCRをここまで詳しく言語化した記事は他にないはずです。ぜひお見逃しなく。

この記事でわかること
・TCRにおける第一歩「めくる(剥離)」の考え方
・MPC(Myoma Pseudo-Capsule:筋腫偽被膜)の大切さ
・子宮穿孔を防ぐための必須テクニックです。

TCRの概要と”めくる、削る、引っ張る”

模式図はこちらになります。子宮に線維腫である筋腫核があります!
これを核出することが子宮鏡下子宮筋腫核出術になります

そしてTCRの手順は以下に集約されます

TCRの順番
1めくる(剥離)
2削る(回収)
3引っ張るあるいは収縮させる(テンションをかける)
核出が終わるまで1に戻る

1めくる(剥離)

まず切開を入れることからTCRは始まります。

切開を入れて、筋腫の層を同定する。その後、筋腫に沿って核出していく。これにつきます。

まず、筋腫を包む皮の部分(子宮内膜および筋層)を切開して筋腫を剥き出します。

そしてみんな大好き、あわあわの層(Fascia)があるのでそこを剥離していけばいいのです。

ここを子宮鏡界隈ではMPC(Myoma Pseudo-Capsule(筋腫偽被膜))と言います。

MPC = Myoma Pseudo-Capsule(筋腫偽被膜)とは
筋腫を取り巻く薄い“偽被膜”で、平滑筋・膠原線維に神経血管束が走る層。ここを温存して偽被膜内(avascular plane)で剥離する「intracapsular myomectomy」が推奨されます
・なぜ重要?
出血を抑える:偽被膜内を進むと出血が少ない。Taylor & Francis Online
治癒と妊孕性に良い:偽被膜を損傷すると神経ペプチド・神経線維が減少し筋層治癒が不良になりうるため、温存が望ましい。PubMed,EJOG
合併症が少ない:偽被膜を温存した核出は治癒促進や合併症の低減と関連。Academic Oxford

子宮鏡は超超超超絶近接視野、そして水を灌流しながら手術を行うことから見えてくるクリニカルアナトミーだと個人的には理解しています。

このMPCの層の一番筋腫の核側を剥離することでなるべくMPCを温存でき、予後が良いと考えています。

MPCの層の同定方法

まず、MPCの層を同定することからTCRは始まります。

①カットで内膜を破ります。そして内膜、MPC、筋腫との境を探します。

実際の手術ではこんな感じ

ちなみに、わかりにくい時は筋腫ごと切ってしまっていいです。

LMの時に子宮筋層を切る時に筋腫まで切開を深くすることで境を明瞭にするような感じです

②そして層を見つけるために、押す!!硬い筋腫核と、柔らかい筋層があり間の層を見つけるのは簡単です。

適切なテンションをかけることで綺麗な層に入る。これも他の手術と同じですね。

手が一本なだけです。

この時、絶対にしてはいけないことがあります。

それは、

子宮の層を押すこと。

え、どうゆうことでしょう。

TCR特有の大きな合併症がありますよね。

なんですか?

そうです。子宮穿孔です!!

これは基本的に奥に突き刺すことで生じます。特に剥離部位が奥に行けば行くほど危ない。

じゃあどうすればいいの?

答えは・・・筋腫を押します。

筋腫を押しても子宮穿孔はしません。筋腫をぐいぐい押して境を見つけましょう。

これでMPCの層が出ましたね。思ったより簡単ですよね。

①内膜を筋腫が見えるまでカットする
②筋腫を押してMPCの層を見つける

MPCの層の剥離 方向は“輪”を守れ

MPCの層がわかれば、次はMPCに忍びこませた電極で剥離を進めていきます。

この時、絶対にしてはいけないことがあります。

それは、”奥に向かって剥離”を行ってMPCの層を進むこと。

え、どういうことでしょう。(デジャブ・・・?)

TCR特有の大きな合併症がありますよね。

なんですか?

そうです。

子宮穿孔です!!(もうわかりましたね)

基本的に子宮穿孔は奥に突き刺すことで生じます。特に剥離部位が奥に行けば行くほど危ない。(大切なので2度言いました)

じゃあどうすればいいの?

答えは・・・リング状に剥離する。

つまり日本人大好き、和(輪)を乱さないことが大切なわけです。(題名回収)

まだよくわからないと思うので、こちらのイメージ図をご覧ください

ぐるぐる筋腫をなぞるようにリング状に剥離していきます。この時に大切なのは、輪を乱さないこと。一部深くいくとそれだけ一部にテンションがかかり穿孔のリスクが高まります。

以下のようにリング上に剥離を進めていくわけです

決して一部分を深くやってはけません!!輪を乱さない。これ大切です。

実際はこんな感じ

今回はめくる方法(MPCの同定と剥離)について解説しました。次回は削る(回収)について、そのタイミング、やり方について解説します。どうぞお楽しみに。

更新はXで通知しています。続きが気になる方はどうぞフォローしてお待ちください。

問題

TCRにおけるMPCの剥離で最も重要なことはどれでしょうか?
A. 奥に向かって一気に剥離を進める
B. 子宮を強く押して境界を探す
C. 筋腫を押して層を同定する
D. 一部を深く剥離してから広げる

解答

C. 筋腫を押して層を同定する

解説

子宮穿孔の多くは「奥に突き進む操作」で起こります。そのため、子宮を押すのではなく「筋腫を押す」ことでMPCとの境界を安全に見つけるのが基本です。さらに剥離はリング状に均等に行うことで、テンションを分散させて安全性を高めます。

ごっそ

ごっそ

百名以上からベスト指導医に選出された10年目若手産婦人科医。
研修医時代から腹腔鏡練習や動画メインでの復習を欠かさず、たくさんの失敗を乗り越え現在ダグラス窩閉鎖症例やキロ越えのTLH(RASH)を執刀中。
日本産科婦人科学会の若手医員選出。
教育の充実目的で情報発信しています。

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